《第26回》ブラザー工業株式会社 代表取締役社長 小池 利和 氏

ブラザー工業株式会社 代表取締役社長 小池 利和 氏に、これからの時代に必要な経営者として持つべき心構えや行動力についてお話を伺いました。ぜひご覧ください。(※敬称略)

後継者の育成で心がけていることとは?
圧倒的な当事者意識を持つこととは?
次世代の経営者に期待することとは?
やる続けることの大切さとは?
企業に必要な地盤とは?
社長が持つべき覚悟とは?
経営者に必要な心構えとは?

インタビュアー:一般社団法人日本能率協会

後継者の育成で心がけていることとは?

<JMA>
今日は2点お話をお伺いしたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

はじめに、後継者育成の視点から、育成のプロセスについて、
小池様のお考えをお聞かせいただけますか?

実際に、3年(※2017年現在は4年経過)、テリーのチャレンジ塾(小池氏の塾)という場で30代から40代の次世代リーダーの方々の育成をされているということですが、どのようなことを心がけていらっしゃるのでしょうか。

<小池>
参加メンバーには、まずは自分たちが今やっている仕事を超えた視野、少し高い地位での見方をしようと呼びかけています。

自分のやっているプロセスだけを見て、そこだけを一生懸命やる、掘り下げるというのも重要だけれども、やはりプロセス全体を俯瞰できることが大事です。

例えば自分がメカのエンジニアだったら、ソフトやハードのエンジニアがどんなことをやっているのか、それが分かっているのであれば次は財務系の人たちはどんなことをやっているのか、何を考えているのかといった形で、人との交流を増やしプロセスを俯瞰できるようにしていきます。このように大局に立って知識や情報を集めることに興味を持って、いろいろなことをやっていって欲しいですね。

そして、やはり自分を磨かないといけないと思いますね。
語学であれ、自分のスキルであれ、同時に向上させなければならない。

また、新しい事業をどの会社も必要としているわけだから、失敗を恐れずにチャレンジすることが大切ですね。チャレンジ塾では、失敗した例をいろいろ伝えて、こんなやつ(私)でも社長になったと話しています(笑)。

圧倒的な当事者意識を持つこととは?

<JMA>
ご自身の専門分野だけではなくて、周りや、もっと深いところで機能別にも視野を拡げるということですね。

講義のなかで、小池様がアメリカに行かれて経験されたことが、すごく多岐にわたっていましたが、それはご自身で意識してやられたのか、あるいは状況的にそうなったのでしょうか。

<小池>
両方でしょうね。

私は、ビジネスについて色々なことを知りたい、勉強したいと常に思っており、自分が責任を持ってやるからには、全部知っておいたほうがいいという気持ちでやってきました。

<JMA>
ご自身が責任を持つという、自己責任といいますか、自分事にすることから、視点が上がっていたのでしょうか。

<小池>
「圧倒的な当事者意識」と、「おせっかいの気持ち」を持とうといつも言っていますね。

例えば前者は“このプロジェクトは自分が引っ張ってやりとげるぞ”といった強い気持ちが必要ということ、後者は、他者を見て“間違ったことをやっているのにそれを黙っている”ようではいけないといったことです。

「ちょっと面白そうだな」「俺にもちょっと教えてくれ」「おいおい、お前、それ間違っているぞ」といった具合にね。

<JMA>
そのあたりが、今日のお話にもありましたが、社員の方々の風土の良さとか、途中で辞める人が少ないという温かさにもつながっているのでしょうね。

おせっかいといってもなかなか難しくて、もしかしたら圧倒的な当事者意識があればできるのかもしれませんが、そういったことを臆せずできる、家庭的な職場の雰囲気というか、自分で発信する力などは、テリーのチャレンジ塾の中で学べるのでしょうか。

<小池>
いろいろな部門から選抜されてきたチャレンジ塾のメンバー30人に、メンバー同士の交流をしっかりやろうと言っていることもその一つでしょうか。

<JMA>
なるほど。そこでまた、自分の視野も広がりますね。

<小池>
そうそう。相手のこともわかるようになれば仕事もやりやすくなり、自分の視野も広がると考えていますよ。

次世代の経営者に期待することとは?

<JMA>
圧倒的な当事者意識は、リーダーシップにもつながると思うのですが、小池様が考えるリーダーシップとして、これから次世代の後継者、もしくは経営者になる方々に向けて、どのようなことを期待されていらっしゃいますか。

<小池>
そうですね、当社は、私が37年前(※2017年現在38年前)に入社した時と比べると会社の規模も変わり、グローバルな従業員も山ほど増え状況が変わりましたね。

それでも大切にしたいことは、思いやりであったり、家庭的な雰囲気であったり、働きやすい環境であるので、そこは偉大なる中小企業でいいと考えています。

そういう気持ちで従業員と接し、オープンに話をできる人たちが自分の後継者になるのが好ましいと考えていますね。

<JMA>
テリー塾に選抜されるような方々や、現経営者の方々にも、
やはりオープンマインドで明るくというメッセージが伝わっているのですね。

<小池>
すでにやってくれてはいるけれど、もっと努力ができると思っていますね。
まだ余裕があるはずだと感じています。

やる続けることの大切さとは?

<JMA>
週2回(2017年現在 週1回)、テリーさん(小池様)の自伝といいますか、(Webで)メッセージを発信され続けて10年でしょうか、やり続けるということを、まさしく自ら体現されていらっしゃいます。

次世代の後継者の方々に、やり続けるという点でアドバイスをお願いします。

<小池>
私のあとの人は大変と思います。
これだけ真面目に、一生懸命にやりすぎちゃっているから、これは反省点。

<JMA>
なるほど(笑)。

<小池>
自分でもこれ以上できないなと思いながらやっているから、
次の人はまた別のやり方を考えるでしょう。

<JMA>
あくまでもこれはテリーさんのやり方だということで。

<小池>
これは私のやり方であり、これだけアクティブにやれるというのも、たぶん自分が天から授かった才能だと思いますので、その才能を次の人にも求めるつもりはありません。

その人はその人なりのやり方と、人への接し方でやればいい。

ただ心の中では、明るく、楽しく、元気に、好奇心を持って、いろいろやってみようといったところを伝承してくれるといいなと思っています。

私も、社長を辞めたらすぐ消えるというわけではないので、それなりのカラーといいますか、バックアップして、サポートしているのではないのかなとは思っていますね。

企業に必要な地盤とは?

<JMA>
今日のお話にもありましたが、そういった素地があって、大きく事業の展開があるというふうに思っております。

お話をお伺いしていて、やはり地盤がしっかりできている企業様だからこそなんだなと。

<小池>
ハハハハ(笑)、それは誤解じゃないでしょうか?運が大きいと思いますよ(笑)。

<JMA>
私も、いろいろお話をお伺いする機会があるのですけれども、やはりそういったものがないと、なかなか社員の皆さんもついていけないですし、チャレンジするといっても、言葉で言うのは簡単ですが、少なからず恐怖を感じるものですし、おせっかいも、圧倒的な当事者意識というものがないと出せないと思います。

<小池>
若い人がチャレンジして、失敗したら誰の責任かと言えば、私の責任ですね。

あくまで上長の責任であって、本人の責任ではありません。

言うことを聞かずに失敗したらそれは責任を持てませんが、言われた通りにしっかりやったけれども結果が伴わない場合もよくあるので、それはそれで仕方がないと思います。

私も失敗をやらかした時に、あいつが悪いって思いながら「ごめんなさい」って言っていたこともありますよ。

あいつが真面目にやってくれりゃあ、もう少しうまくいったはずなのにみたいなね。
でもそんな事を言ってもしょうがないので、気にしないことですね。

少しの失敗で会社が傾く状況ではないうちに、いろいろやっておかなきゃいけないと思います。

社長が持つべき覚悟とは?

<JMA>
取締役会の変革も含めて、そういったご自身のやり方というものを着実に実行されてきました。

これから役員や社長になられる方々にも、経営者として、社長としての覚悟といったことが、今後必要になると思います。

<小池>
やはり“信念”だと思いますね。

自分がこうありたいと思って信じたら、それを実行に移して、実現するという気持ちがどれだけ強いかだと思いますね。

<JMA>
その強い思いを、従業員の皆さんは、ちゃんと見ていらっしゃいますよね。

<小池>
そう信じていますが、実際のところはどうでしょうか(笑)

<JMA>
今日のように、笑いが出るインタビューも珍しいです。

<小池>
いつも色々喋ってしまうので、株主総会も極めて人気が高いんですよ。

<JMA>
なるほど(笑)。

<小池>
2016年の株主総会なんて、ある意味ですごかったですよ、

10人ぐらいが質問するのだけど、「なんでお前はそんなに元気なのか」とか、
和やかな雰囲気で。「こんな株主総会、素敵」とか言われまして。
株主総会で素敵って言われたのは初めてだなと思いましたね(笑)

経営者に必要な心構えとは?

<JMA>
こういうお人柄であるからこそ、皆さんが安心して働けて、チャレンジができるわけですね。

<小池>
分け隔てなくカジュアルに接するというのは、やはり大事なことだと思いますね。

それは、自分がそういう立場であるからこそ、自信があるからこそ
そのように接することができるわけです。

時々、偉くなると、偉そうにしなきゃいけないというように勘違いをする人がいるけれども、そういう人と自分みたいなやり方をする人とでは、長い間で違いが出るのかもしれませんね。

<JMA>
なるほど、ありがとうございます。

次世代の経営者を育成しようと思っている方々や、そういった方々に必要な能力といいますか、人間性ですね。

今日のセミナーでも、最後の3日目は、取締役の人間的な魅力というところだったのですけれども、そういったことを、受講者の皆様には感じていただけたと思います。

今日のご出講も含めて、本当にどうもありがとうございました。

<小池>
社長は、最後に責任を取らなければいけないので、あらゆることを知っていないといけないし、あらゆることにおいて自分が正しいと思うことを常に決めていかないといけないので、本当にストレスの溜まる、あまり対価に見合わない仕事だとは思いますが、日本の企業や国の為、それから従業員の為と思えば、そのぐらいのことを粉骨砕身やるのは、ごく当たり前の心得だろうと思います。

<JMA>
そういった心構えで、これから皆さんには進んでいってもらえれば。

<小池>
悲壮になる必要はないけれども、こういう環境の中だからこそいろいろなことにチャレンジをしないといけないし、変化への対応力を求められる中、采配を振ってリーダーシップを発揮できるというところで、トップたるもののバリューというのはあるのだろうなと思いますね。

<JMA>
本当に心強いお言葉です。
ありがとうございました。

※小池氏には、第98回新任取締役セミナー (2016年7月30日)でのご講演後、本インタビューにご協力いただきました。