全日本空輸株式会社 取締役 執行役員 國分裕之氏 インタビュー その2

全日本空輸株式会社 取締役 執行役員 國分裕之 氏に”経営幹部育成”に対するお話を伺いました。経営者の資質の特徴や、研修対象者を選抜する仕組みについてなどお伺いいたしました。経営者育成に取り組む方々へのメッセージをいただきました。ぜひご一読ください。

◆経営者のマインドづくりに
「役員・経営幹部向け2日間通いプログラム」
・MBA的な内容から意識を変える研修に変えた理由
・ANAの経営者の資質の特徴
・研修対象者を選抜する仕組み
◆候補者の育成に人事が力を尽くす
・経営者育成に取り組む方へのメッセージ など

インタビュアー:一般社団法人日本能率協会 久保田・丸尾

経営者のマインドづくりに「役員・経営幹部向け2日間通いプログラム」

ANA本体で、MBA的な内容から意識を変える研修に変えた理由は? 

経営者の資質を育てるためです。弊社は、リベラルアーツに取り組むのも早かったと思います。日本能率協会の「リーダーのためのリベラルアーツ講座」、には、敢えて若手を参加させるようにしています。課長層から参加させ、人間力を上げて、物事を判断できる経営者の資質を身につけてもらえるようにしています。

ANAの経営者の資質の特徴は? 

これはエアライン独特の点だと思いますが、エアラインは二つの経営層を作っていかなければいけないんです。

一つはエアライン独特の専門分野の高い領域をしっかり見ていく経営者です。例えば、乗員部門、客室部門、整備部門。その部門はそこで育った人でなければ、わかりません。その中で、経営者的な視点を持った人、トップとしてマネジメントしていく人が必要です。
もう一つが、他の会社さんも同じでしょうが、スタッフ部門の管理者ですね。例えば、法務・財務・経理・人事・経営企画・マーケティング。こういった部門では幹部になる前にその部門を経験し、そのまま部長、役員になっていただくのが望ましいと思っています。
これは執行役員レベルの話ですが、ボードメンバーになるともっと全体を見なければいけません。いくつかの自分の柱を持ちながら、会社全体に対して意見交換ができる。なるべく横断的に物事が見れるようにしていかなければいけません。中心があって、なおかつ広い視野を持つ。それを育成するために、マインドセットや他部門との交流機会をキャリアの早い時期から設けています。

マインドを変える時に気をつけていることはありますか? 

経営者としてのマインドを持ってもらうために、日本能率協会の「役員・経営幹部向け2日間通いプログラム Company Direction Program(CDP) 」に参加してもらうようにしています。
それぞれに得意な分野があるので、その部分については敢えて研修する必要はありませんから、5つの分野の中から自分の弱いと思う部分や興味を持っている部分を特に勉強してもらうようにしています。ほとんどの人間が財務に関係することがないので、特に「財務・会計必須セミナー」は積極的に参加するように勧めています。この研修の参加者から取締役になるものが出てきています。

研修者を選抜する仕組みはありますか? 

選抜は「人財戦略室」と「人財大学」が協力しながら、人事評価などを含めていろんな観点から判断しています。判断はアセスメントだけでなく、所属長の推薦なども考慮して選んでいます。

候補者の育成に人事が力を尽くす

「集合研修」と「他流試合型」、それぞれのメリットは何でしょうか? 

「社内研修」と「他流試合」に出すメンバーは分けているんです。「他流試合」の場合は対象者の適正に向き合いながら、その人にあった研修を受講してもらうようにしています。「個」の視野を広げるのに有効ですね。今は特にCDPに集中していますが、将来的には日本能率協会の、「次世代を導く経営者のための 経営革新塾 」を活用するのもいいかもしれません。あくまで、その人個人に適した研修を選択することが重要だと思います。
日本能率協会のトップマネジメント研修プログラムは、役員各層毎の研修が用意されていますし、目的別でもラインナップされていますので「他流試合型」の研修として使いやすいですね。狭い世界から出ていくことができます。
「社内研修」のメリットは多くの人を育成できること。社内の全体を底上げしたいと言う時は、「社内研修」が効果的です。

私たち日本能率協会の研修をご利用いただいていますが、ご利用するにあたっての障壁はありましたか? 

これまでの経緯があって、逆に楽だったんです。部長研修まではこれまで実施していましたが、それより上の階層で研修はしていませんでしたから。個別の派遣はありましたが、でもそれは部長、課長層が多く、役員層で外部に出る研修はありませんでした。「こう言う目的で研修に参加させたい」ということを会社に伝えたら、決まるのは早かったですね。
どこの会社さんでも同じ悩みだと思いますが、今すでにそのポストになっている人にどのような研修を実施してボトムアップしていくか。そこが難しい。その手前にいる役員候補者もいますし、もっと手前にいる人もいる。それぞれに対して何らかの研修を実施しないといけません。
そういうこともあり、今は新入社員層にはいろんなことを経験させようとしています。海外も一回は赴任してもらう。できれば、若いうちに一度行って、中堅で一回行って、できるという人には海外のトップをしてもらう。それが理想ですね。だいたい新入社員は最初はグループ会社出向・海外勤務なんです。20代でいろいろ経験してもらって、30代、40代とキャリアを築いてもらう。そのようにつながりを持ったキャリアが形成できるように意識しています。
部長層は自分の後任を育成する使命も持っています。役員も自分の後任候補を選べるように部下育成をしないといけない。資質やマインドを持った人材が必要です。我々人事は情報を集めるヒアリングが仕事なんですけれども、「次の次を任せる人財を考えてください」というメッセージを発信することも仕事になります。

國分さんが個人的に意識していることはありますか? 

MBA的な部分は社内の研修で学んだのですが、当時は若くて真面目だったので一生懸命やりました。未だにその時の資料はファイルで残っています。せっかく会社が研修の機会をくれましたので、厳しい研修でしたが、きちんとやりました。そういう意味では、MBA的な基礎の部分を若い時に習得することができたので、よかったと思います。

今でも社外のセミナーには、時間があれば積極的に参加するようにしています。2010年から人事を担当していますが、そうすることで、いろんな経験もできますし、いろんな方とも会えます。良かったものについては社内でも広める。日本能率協会のCDPもそうです。
研修に参加することで、世の中の流れから乗り遅れない。時流のトップにいる必要はないですけれども、先頭集団にいることはできる。そのおかげで弊社では、早い時期から働き方改革に取り組んでいますし、女性活躍推進も会社として早い時期から取り組んでいます。LGBTもそうですね。

國分さんご自身はどのようなキャリアビジョンを持っていたのですか? 

整備と乗員と労政を経験していたので「人事・労務系が自分の屋台骨だな」というのはありました。将来的には、そのあたりをできればいいなと思っていたのですが、MBAの選抜研修を受けた後に労務に戻ったんです。その時にやりたいことが色々ありました。教育研修や採用ですね。
その後、グループ会社に行って、総務部長をしていました。社長の秘書業務もしていたので改革に着手しやすかったのですが、その時に、ここまでやってきたのでANA本体の人事部門に戻りたいなというのはありましたね。そういう意味では過去の経験を踏まえて「こういうことをやりたい」という思いは持っていました。

自分の中で役員としてマインドが変わったきっかけはありましたか? 

一番のきっかけは知識を持ったというよりは、判断する時の材料が増えて、いろんなことを頭に入れながら判断できるようになったことです。判断するための度量が広がった。MBAの知識をいかしたというよりは、選択肢が増えた。いろいろ考えて判断できるようになりました。

特にロジカルシンキングをやったわけではないですが、ビジネスファンダメンタルを上げながら、的確にいろんなことを見れるようになったと思います。自分の思いだけではダメだというのもその時にわかりました。

最後になりますが、経営者育成に悩んでいる方へのメッセージをいただけますか。 

我々も取り組んでいる途中なので、偉そうに言えないのですが、トップを巻き込んで、一緒になってやっていくということが大事だと思います。人事の一部門だけが悩んでいても、難しいですね。
いくつかの会社さんとお話しすると、経営層の育成に人事が絡ませてもらえない会社さんもあったりします。経営者育成も人財育成の延長線上にあります。突然、経営層を育成することはできない。本当は新入社員の時からだんだんと行うべきなんです。

選ぶのはトップになりますが、候補者の育成は、人事が責任持っておこなうべきです。人事の方はそのように自信を持っていただきたいです。

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