《第11回》株式会社ノーリツ 代表取締役社長 兼 代表執行役員 國井 総一郎 氏

株式会社ノーリツ 代表取締役社長 兼 代表執行役員 國井総一郎氏に、これから会社を担う役員の方々に対する動画メッセージや、ご自身が執行役員になられた当時の思い、経営者が常に磨くべき素養についてお伺いいたしました。

インタビュアー:一般社団法人日本能率協会 井上

特別メッセージ動画 ~新任取締役・執行役員の方々へ

危機感のない社員を変える3つの秘策とは?

<井上>
本日は、大きく分けて2つの質問が中心になります。
1つは今日の話にも出ていましたが、社長が執行役員を含む役員になられたときの状況です。
もう1つは今回セミナーを受講する新任執行役員の方へのメッセージをお願いします。

まずは、今日の受講者についてどのような印象を持ちましたか。

<國井社長>
真剣に聞いてもらえたと思いました。

<井上>
今日のお話は、子会社再建の話がすごいと思いました。
特に危機感がなかったというところを掘り下げると、危機感がない従業員に対し、どのようなアプローチをされましたか。その結果、黒字になりましたよね。

<國井社長>
子会社へ行ってみて驚いたのが親会社からの支援なしでは、成り立たない経営体質だったことです。
2001年に当社が資本参加し、従来と同じ経営手法であれば破綻する可能性もあり、既にお尻に火がついているのに、経営陣と幹部からは危機感が全く感じられませんでした。
そこでまず幹部に取り組ませたのが、徹底した経費削減です。全国の営業拠点に命じて、家賃を一律3割下げてもらうよう、大家と交渉させました。「新しく来た社長がとにかく鬼みたいな人で、家賃を下げてもらわないと会社に戻れない」と言うよう指示し、改革の第一歩を進めました。

次に、現在の経営状況のままでは、年末のボーナスがどうなるか試算させました。すると支店長クラスでも成績がよくない人は、15万ぐらいしか出せない。いくらなんでもそれではかわいそうだから、一律30万円で足切りしました。
これで社内の空気感が一気に変わりました。それまでがあまりにぬるま湯過ぎたところに、冷水を浴びせることで気が引き締まったのでしょう。そこからじわじわと業績が回復し始めて、半年後には黒字に転換しました。

<井上>
危機にある状況だと、身を持って分からせたわけですね。

<國井社長>
この成功体験が幹部たちにとって何より自信となったようで、それ以降はみんなが目の色を変えて改革に取り組むようになりました。結果、続けて黒字を出せるようになっていきました。

業績が良いときに経営者がすべきこととは?

<井上>
今日受講している方々の会社はここ数年、業績が上がっているところが多いようです。
役員として「会社をこう変えたい」と思っているにもかかわらず、その方向へ向かわせることができずに危機感を持つ方も多いと思います。
しかし、会社全体としてはあまり危機感が生まれていません。その人たちはどのように対処すればいいのでしょうか。

<國井社長>
覚悟と自信を持ってやるしかないと思います。

<井上>
うまくいっているからこそ、危機感を持たなくなるのは、他の会社にも多いと思います。

<國井社長>
偉くなってくると、必ず危機感がなくなります。ずっと良い会社などほとんどありません。

<井上>
役員の方の力が問われることになるわけですね。

<國井社長>
会社では絶対に社長が問われます。組織内だと、そこを執行している役員です。
絶対にボスで会社は変わりますから。

<井上>
ボスが「うちはうまくいっている」と思うようになった段階で危なくなりますね。

<國井社長>
成功したと思ったら、そこから転落していくのは、本当のことでしょう。
不思議なことに、社長が「ああ良かった」と安心した途端に、雰囲気が変わります。
それはすぐに社員にも伝わるものです。

<井上>
成功して考えることを止めたら、だめになる。だから、会社の状況が良いときでも、考え続けるわけですね。

恐らく今も社長は考え続けているのでしょう。
今日の話を聞き、受講者の役員たちも考え続ける姿勢が身についたのではないでしょうか。

子会社の社長になって変わったこととは?

<井上>
最初に10数年前、役員になったばかりのころの話をされていました。
当時の國井さんの考えや行動に何か変化はありましたか。

<國井社長>
たまたま子会社の社長をしているときでした。会社の大小に関係なく、社長というのは特別な存在です。社長には責任と権力が集中します。
執行役員と子会社の社長では、その点に大きな差があります。

今、うちの会社には常勤役員が6人いますが、うち5人は子会社の社長を経験しました。
全く意図したわけではありませんが、そうなっています。

<井上>
ちなみに、当時の國井さんは研究開発をしていたのに、どうして選ばれたのでしょうか。
ご自身が選ばれたことについて、思い当たることはありますか。

<國井社長>
言いたいことを言っていたからかもしれません。

<井上>
会社の大小に関わりなく、会社を任せられる人材と見られたのですかね。

<國井社長>
「あいつは何か悪いことをしたのか」と言われるくらい、言いたいことを言っていました。
そういう若い人たちに出てきてほしいと思っているのですが、今の連中にはそういうところがありません。

若い人には小さくてもいいから、子会社のトップをやらせようと考えています。トップになると、傷つきますよね。現場のトップでも失敗することはあります。
多少傷ついてもいいから、子会社のトップをやらせて修羅場をくぐらせたいのです。

でも、大きな会社で偉くなる人は、それを絶対にやろうとしません。
仮に、子会社に出て行ったとしてもトップにはつかないのです。

<井上>
本当にやらないですね。

<國井社長>
それに対し、うちでは敗者復活戦みたいなことも含めてやらせています。

修羅場をくぐることはなぜ必要?

<井上>
やはり修羅場は必要なものなのですね。

<國井社長>
小さな会社であっても社長になれば、従業員の雇用を守り、会社を成長、発展させなければなりません。そういうミッションを課せられます。

<井上>
避けようがありませんよね。全部の責任が自分にかかるわけですから。

<國井社長>
だから、覚悟を決めないといけないのです。逃げ回っても仕方がありませんからね。

<井上>
今日の受講者の中で、これから子会社に出向する機会があったら、それはすごい経験になるわけですね。

<國井社長>
子会社を経験することは、非常に重要だと思います。社長をやるのは良い会社であったとしても、いろいろな意味で苦労があるでしょう。

<井上>
多くの人はそこを想像しますね。だから、社長の今日の話で「子会社の社長をずっとやりたかった」というところが面白かったです。「大変なのに」と思っていました。

<國井社長>
子会社は組織が小さいから、社長をやるのが面白いのです。

<井上>
変化が激しいですよね。すごい会社が急に転落したり、赤字が一気に黒字に変わったり。従業員が急についてくるようになったという話もされていました。

<國井社長>
手応えを感じるときは確かにあります。後で振り返って「あの時ああやったのが良かったのだ」と分かることもありますよ。

<井上>
組織が小さいから、それがよく分かるのですね。

<國井社長>
分かりやすいでしょうね。

<井上>
逆に、大会社へ行くと分かりにくいでしょう。

<國井社長>
分かりにくいと思いますよ。

<井上>
自分で選べないことかもしれませんが、もし役員に選択肢があるとしたら、本社の階段を上るより、1回外へ出て小さくても自分で経営することを選んだ方がいいかもしれませんね。

<國井社長>
今、それをやっている会社はありますよ。

<井上>
一部の会社は海外の子会社を選択肢に入れていますね。

<國井社長>
今ではどこの会社も子会社を持っていますから、うちの業界でも子会社の社長をして戻ってくる人が非常に多くなっています。うちも同じですけどね。

<井上>
その方法で胆力をつけ、覚悟を決めていくわけですか。

<國井社長>
胆力が大事です。ある雑誌に書いてありました。知識と見識と胆識を、知識はただ知っているだけ、見識は知っていてそれを使えること、胆識は修羅場をくぐって行動力があることとね。

<井上>
そこにつながるわけですね。知識を知恵にするとよくいわれますが、それを実行するのが胆識ですか。

<國井社長>
そのように書いてありました。読んでいて面白いと思いましたね。

考え続けるために欠かせない4つのことは?

<井上>
社長自身が考え続けるというスタンスを身につけるうえで、工夫したことはありますか。あるいは考え続けるための工夫といった方がいいでしょうか。

<國井社長>
難しいな、寝ても覚めても考えているわけですが、物を書いたり1人で考えたりすることもあります。
でも、できるだけ他の人とコミュニケーションを取り、いろいろな人の意見を聞くことが、考え続けるうえで大事なのではないでしょうか。

だから、社内でもあれこれ話をしますし、社外でつき合いのある人や高校、大学の友人らともできるだけ話すようにしています。

<井上>
自分1人で考えるより、いろいろな人と話をする方がいいというわけですね。

<國井社長>
そういうことをしていかないと、自分1人では発想が限られます。ですから、他の人とコミュニケーションを取るのは、とても大切です。

<井上>
今日受講した方たちも、これからいろんな苦難に出会うと思います。それに対するエールや応援歌みたいな感じで、お話していただきたいのですが。

<國井社長>
経営の課題や問題に答えはありませんから、覚悟を決めて徹底的に考えてほしいです。解決策は寝ても覚めても考えるしかないでしょうね。経営者としての覚悟を決めなければいけません。

講演でもお話しましたが、経営の課題や問題は答えのないものがほとんどです。やはり役員として覚悟を決め、徹底的に考えること、寝ても覚めても考えることが最も大事だと思います。

<井上>
本日は誠にありがとうございました。