《第15回》株式会社良品計画 名誉顧問 松井 忠三 氏

株式会社 良品計画 名誉顧問 松井 忠三氏に、これから会社を担う役員の方々に向けてのメッセージや、経営者として大切なこと、自分自身を高める為に意識してとった行動などについてお伺いいたしました。

インタビュアー:一般社団法人日本能率協会 久保田

取締役になった時に意識したこととは?

<JMA>
本日はご出講いただきまして、ありがとうございました。
本日参加された皆様は、今後、経営者としてご活躍されることが期待されている方々ということなのですけれども、ここでは、松井様にご自身のことを振り返っていただき、少しお話をお聞かせいただきたいと思います。

まずは、松井様が初めて役員になられた時、取締役になられた時のことをお伺いしたいのですが、役員になられた時に、これまで社員の時に意識されていたこと、あるいは考え方や行動などで、自分自身何か変わられたということはございましたか。

<松井>
私は、1993 年に取締役になったのですが、この時に自分の意識が変わったかといいますと、残念ながらそれほど変わりませんでしたね。

もちろん、会社から派遣されて、新任取締役セミナーなどにもいろいろ行ったりしましたが、仕事の範囲は同じだなと感じました。

上場企業ですと、株主総会というものがありますよね。株主総会に出るということは、いやが応でも会社の代表ということになりますから、そうするとね、やっぱり会社を守らなきゃいけないという実感がピシッと出ます。

ただ、私が役員になった時には、良品計画はまだ上場企業ではありませんでしたから、内部で取締役になったということですね。

そういうこともあって、取締役になったことで突然意識が変わったかというと、あまりそういうことはなく、これまでの部長の延長上で仕事をやっていたと思いますね。

ただその後、だんだんと仕事が変わっていき、ポストが重くなっていきます。

私は、総務人事部長で取締役になり、その翌年、無印良品事業部という営業本部長でも取締役になりました。

そしてそれから2年後に、今度は流通推進という物流の役員で常務になってというふうに、担当が変わっていきました。

取締役となって、仕事が変わっていき、そしてポストが上がっていく。そうしていくうちに、だんだんと自覚が出てくるようになります。

最初に意識改革ということがあるわけではなくて、まずは責任感を持つことが一番大事だと思いますね。

ではこの責任感は、どうやって出てくるのかというと、当事者意識を持つことから出てきます。

役員になり、部門の責任者となると、責任感が出てきますが、それは当事者意識が反映されるからだと思います。この時に初めて自分が、組織の目的や、あるいは課題をどう解決していこうかというふうになってくるのですよね。

またその頃になると、自分は相当程度やらないと、経営者としての役割が果たせないということにも気づき始めます。

ポストアップと責任の範囲が広がることによって、取締役としての自覚が、だんだん出てきたというわけですね。
ですから、取締役になった途端に、いきなり意識が変わりましたということは、私はあまりなかったと思いますね。

自分自身を高める為に意識してとった行動とは?

<JMA>
ポストアップ、あるいは役割や責任が広がってきた時に、ご自身を高める為に何か意識して努力されていたことなどはございますか。

<松井>
ああ、それはね、たくさんやりましたね。

やはり自分が取り組む課題ですからね。自分がやる課題を高める為には、いろんな付き合いをしていくことになります。

ですからあの当時は、結構外に出て行きましたね。

人事部長ということもあり、とにかく様々な事例を調べてこなきゃいけない。

また専門店に来たのも初めてでしたから、専門店の運営とはどういうものなのかといったことを、専門店の役員に聞いて回ったりもしました。

さらには、労務対策もやったことがありませんでしたので、労務はどういうふうにやればいいだろうかとか、人事制度も作ったことがありませんでしたから、これも一生懸命勉強しました。

人事制度については、Kさんという方がいらっしゃって、社外や、いろいろなところで活動しておられましたので、話を聞きに行ったりもしました。

様々なセミナーに行き、人と会い、そして今度は自分で指導してくれる人を見つけて作りだしていくという形になりますね。

つまり、新しい仕事に就いて、自分がこれをどういうふうに広げていこうかと考えた時に、どんどん外へ勉強に行く、人に会いに行くことをするわけです。
目的を達成する為には、そうしたことが必要ですから、外に行くことは、その頃から非常に多くなりました。

積極的に外に行って勉強した理由とは?

<JMA>
これまで経験したことのない職種に就かれて、また役職も責任も変わられたことで、意識的に外に出ようというお考えになられたということですが、一方で、例えば社内の方にお話を聞くなど、外に出ないで勉強するという選択肢もあったのではないかと思います。
それでも意識して外に出られたということには、今までの経験の中から、何か理由がおありだったのでしょうか。

<松井>
社内にはね、なんといいますか、そんなに参考になることはないと思うのですよ。
物流が何をやっているか、商品は何をやっているかとか、だいたいみんなわかっているわけです。

でもそれでは問題が解決しません。
外に行くと優れた企業というのが必ずあって、ちゃんとした経営者の方がいて、そういった外からの情報を貪欲に取り入れない限りうまくいかないし、自分の課題は解決しません。

自分の課題が解決しないということは、会社のレベルも上がっていかないということです。
外に行けば、課題を解決した企業、あるいは人が必ずいますから、そういう人たちを探し当てたほうが早いと思うのですよね。

もっとも、当時はそんなところまでは考えていませんでしたが、でもやはりヒントは外にあるというふうには思っていましたので、どんどん外に出て行かなきゃダメだと。

あとは、できるだけ自分が嫌だなあと思う経験をしたほうがいいと思います。
会社内での業務が忙しくて、今日はこれとあれもやらなくちゃいけない、でも外には行ってみたいセミナーがある。

その時にどちらを選択するかとなったら、やはり嫌なほうを選ぶようにする。
会社の中にいて、残業して、自分たちが分かり切ったことをやっているよりは、外に行って得た知識や経験のほうが、はるかに大きいと思います。

そういう経験を何回か重ねているうちに、どうしようかなと迷った時には、やはり外に行かざるを得ないと。
行ってみるとね、ヒントがありますよ。

経営者として大切にすべき2つのこととは?

<JMA>
今日のご講演の中にも、31の項目の経営姿勢と、今までの経験から大事にされていることが出てきたのですけれども、今のお話の中にも、松井様のご経験から、我々にとってヒントとなるようなことがたくさんありましたので、大変勉強になりました、ありがとうございます。

今回の参加者の方々には、私どもが行っている研修などは、外に出るという意味でも、今後もご利用いただけるのではないかと思いますが、外に出るということが大切であるということも含めまして、松井様が外で勉強されてきた中で一番大事だと思われていることや、経営者として大事にされていることなどを、後輩の経営者の方々に、メッセージとしてお伝えしていただければと思うのですけれども。

<松井>
そうですね、一番大事なことは、なんといっても責任感ですね。

自分がこの部署の責任者であると自覚して、課題の解決をしていかないといけない、会社を成長させていかなくちゃならないということです。

それが役員、あるいは部門長の大きな使命ですね。
この使命を果たす、やり切るっていうことが、もう一番大事ですね。

これは、どちらかというと、外から与えられることもありますが、やはり中で、自分の仕事に対する責任感というのがベースになるのだと思います。

責任感は当事者意識とイコールなので、当事者意識が強くならない限り、改革をうまく進めていくことはできないのではないかと思います。

ベースは責任感ですから、これをきちんと認識して、自分に与えられたミッションをやり切っていく、達成していく。

やはり個人の価値観ですよ、やり切るということは。
したがって、そこを強く認識して、意識していくということが一番大事でしょうね。
これはずーっとね、トップになってからも続きますからね。
大切なのはそういうことだと思いますね。

また、これから経営を担われていくということは、大変な職責だろうと思いますので、やはり健康ということも大事にして欲しいですね。
健康に注意をして、職責を全うして、果たしていく。
やはり責任感と、そして当事者意識が不可欠です。

それからもう1つは、全体最適ということですね。
会社全体で見た時に、自分はどういう役割をすればいいのか、この2つのことに気をつけていただけると、全体最適を持った責任感ということで、会社の中で職責を全うすることができるのではないかと思います。
頑張ってください。

<JMA>
本当に力強いメッセージをありがとうございます。
経営者として、自責で考え、責任感を持ってやり切っていただくということを皆様にお伝えして、今回の松井様のお話を、是非ご活用いただきたいなと思います。
今日は短い時間でしたが、どうもありがとうございました。

<松井>
ありがとうございました。